株主総会について解説

スタートアップの株主総会の方法や注意点解説

スタートアップにおいて株主総会をどのように開催すれば良いのか、出来る限り簡易に行いたい、という点についてご質問・ご相談いただくことが良くあります。そのため、今回はスタートアップにおける株主総会開催の具体的な方法と注意点について解説していきます。
株主総会の開催までの流れ
株主総会の一般的な流れは以下のとおりです。

①株主総会の招集を取締役が決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)
②会社から各株主へ招集通知を送る
③株主総会を開催し、必要な決議を行う
招集通知の発送時期
まず①の取締役の決定についてですが、スタートアップの会社は、通常、非公開会社(全ての株式が譲渡制限株式である会社をいいます。)であるため、招集通知の発送は、書面投票又は電子投票を定める場合を除き(一般的にはスタートアップの会社がこれらの投票方法を定める義務を負うことはありません。なお、「書面投票」とは株主本人が書面によって議決権を行使することですので、「代理による委任状に基づく議決権の代理行使」とは異なるため注意が必要です。)、株主総会の日の1週間前(取締役会を設置していない会社の場合、定款によって1週間未満の期間にすることも可能です。)までに行うこととなります(なお、公開会社の場合は2週間前までに通知を行うことが必要です。会社法299条1項参照。)。
ここでよく間違えるポイントとして、「株主総会の1週間前」の数え方があります。具体的には、「株主総会の1週間前」までに通知を行うとすると、株主総会を行うのが「1月15日」の場合、「1月7日」までに招集通知を発送しなければならないこととなります。「1月8日」ではなく、「1月7日」です。つまり、「1週間前」というのは、招集通知の発送日と株主総会の日との間に「中7日」を空ける必要があるのです。そのため、例えば定款において「5日前」と短縮している場合は、「中5日」となるので、「1月15日」に株主総会を開催する場合は「1月9日」までに招集通知を発送する必要があります。
また、取締役会を設置していない会社の場合、招集通知の発送を書面で行う必要がないため、電子メール等を利用して株主に送付する方法で問題ありません。招集通知の発送の電子化については、「株主総会の招集通知及び委任状の電子化」の記事に詳細を記載しておりますので、そちらをご覧ください。
招集通知の内容
上場企業の招集通知には、通常「株主総会参考書類」というものが添付されていますが、スタートアップの会社において、一般的に「株主総会参考書類」を添付する義務を負うことはありません(義務を負う場合は、株主が1000人以上の場合等になります。)。そのため、スタートアップの会社における招集通知は、上場企業の招集通知に比べて、簡易な記載で済むこととなります。なお、具体的にどの程度の記載で足りるのかという点については個別具体的な検討が必要ですので、専門家にご相談いただければと思います。
招集手続について
スタートアップの会社の場合、特にシード、アーリーの時期は株主の数が少ないため、株主総会の招集手続を省略したり、株主総会の決議自体を省略(いわゆるみなし決議)したりすることがよくあります。
株主総会の招集手続を省略するためには、株主全員の同意を取得することと、株主総会の招集にあたり書面投票又は電子投票を定めないことが条件となります(会社法310条)。
また、株主総会の決議自体を省略するみなし決議を実施するためには、株主全員の書面又は電磁的記録による同意の意思表示が必要となります(会社法319条)。
株主総会自体を開催する必要がなく、かつ、招集通知を送付する期間が不要となり、意思決定までの期間が短くなることから、株主総会の決議を省略する方法が簡易なように思えますが、全ての株主から同意書を取得しなければならないため、反対する株主や連絡が取りにくい株主等が存在する場合、逆に手続が煩雑となる可能性があります。
スタートアップの会社の場合、経営株主及び経営株主に協力的な株主によって、株主総会の特別決議を可決することが可能な議決権数を保有していることが多く、株主総会における決議事項が否決される可能性が低いため、株主全員の同意の手続が必要な株主総会の決議自体を省略する手続よりも、実際に株主総会を開催して決議を行ってしまう方が手続としては簡易であると考えることもできます。
いずれの手続を実施するかについては、その会社の株主構成等によって変わってくることとなりますので、専門家とともに検討いただければと思います。
総会当日の手続
2020年は新型コロナウィルス感染症の影響で、株主総会についてハイブリッド型バーチャル株主総会が各社で実施されていましたが、スタートアップにおいては、株主総会の当日までに委任状を全株主から回収するのが一般的であり、株主が株主総会に実際に出席することはほとんどありません。
そのため、経済産業省が公表している「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を参考に、バーチャルの株主総会を設計することは基本的に少ないです。
株主総会の当日は、出席する役員の予定は空けておく必要はあるものの、株主は基本的に一切出席しないことから、役員だけが集まって株主総会自体はすぐに終了することとなります。
株主だけではなく、役員についてもオンラインによって株主総会に出席することができるのか、という点もよく質問がありますが、結論としては、会社法は役員のテレビ会議システム等による株主総会への出席を前提とした条文を規定しているため(会社法施行規則72条3項1号括弧書き)、役員がオンラインによって株主総会に出席することは可能です。なお、役員がオンラインによって出席する場合、情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが必要となる点は注意が必要です。また、役員がオンラインで出席した場合は、株主総会議事録にその役員の名前と出席方法について記載する必要があります。
番外編(投資契約、株主間契約等における事前承諾事項、事前通知事項等について)
会社法の手続と直接関係はありませんが、スタートアップにおいて必ず実施する必要がある事項として、投資契約、株主間契約等において規定されている事前承諾事項や事前通知事項等への対応があります。
もし、スタートアップが投資家との間で締結している契約において定められている事前通知や事前承諾等を実施しなかった場合、一般的には契約違反に基づき、投資家から会社又は経営株主に対して株式買取請求権を行使されるリスクがあるため、十分に注意が必要です。
契約によっては、株主総会を招集するための取締役の決定(取締役会設置会社の場合は取締役会決議)の日の2週間前までに投資家に対して通知を行う必要がある、という条項が定められていることもあるため、株主総会決議が必要な意思決定を行う場合、しっかりと投資契約、株主間契約等における事前承諾事項や事前通知事項等を確認した上でスケジュールを作成する必要があります。なお、事前承諾事項や事前通知事項等について、契約において特段定めがない場合や電磁的記録による方法で可能と規定されている場合は、電子メール等によって事前承諾を取得したり、事前通知を行うことが可能です。
まとめ
以上がスタートアップにおける株主総会の開催方法や注意点となります。スタートアップにおける株主総会は、上場企業に比べて簡易に実施できる点が多々ありますが、仮に株主総会の開催手続に法令違反等があった場合、当該株主総会において決議された議案について取り消される可能性(会社法831条1項)がありますので、手続については慎重にご対応いただければと思います。
Onagi Shuntaro

寄稿者

代表弁護士: 小名木 俊太郎

[弁護士法人GVA法律事務所]

2008年慶応義塾大学法学部卒、明治大学法科大学院を経て、2011年、最高裁判所にて司法研修。八重洲総合法律事務所入所後、東証一部上場企業法務部へ出向。2016年GVA法律事務所に入所し、2018年より現職。2016年からand factory株式会社の社外監査役を務める。企業法務においては幅広いサービスを提供中。信託型ストックオプション、FinTech、EC、M&A・企業買収、IPO支援、人事労務、IT法務、上場企業法務、その他クライアントに応じた法務戦略の構築に従事する。セミナーの講師、執筆実績も多数。